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「反音楽史」 [読書]

▼読み終わった本
*「反音楽史」
石井宏・著、新潮文庫


反音楽史―さらば、ベートーヴェン (新潮文庫)

反音楽史―さらば、ベートーヴェン (新潮文庫)

  • 作者: 石井 宏
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/09/29
  • メディア: 文庫


【帯紹介】
********************

クラシックの音楽史は
ドイツ人の創作!

事実は大違い
山本七平賞受賞作
********************

【カバー(裏表紙側)紹介文】
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン……音楽室に並んだ「楽聖」たちは、なぜドイツ人ばかりなのか?
実際には、17-18世紀の音楽の主流はイタリアにあり、ベートーヴェンでさえイタリア語でサインした。
にもかかわらず、こうした史実を隠し、西洋音楽史をあたかも「ドイツ楽聖伝」のように書き直したのは誰だったのか。
既成の音楽史を覆す画期的評論。
山本七平賞受賞作。
【紹介文終わり】

とてもとても考えさせられる本でした。
2004年に単行本として出版されたものの文庫化ですが、もっと早く読めば良かったと思いました。

上記の紹介文にあるように、これまでの「ドイツ中心」のクラシック音楽に関する考え方を大きく揺るがす本でした。

われわれは「クラシック音楽=ドイツ・オーストリア中心」と思っていますが、この本によれば、こうした概念はドイツ人により「ゆがめられた」ものであり、は後進国であったドイツが「先進国」に追いつこうと画策した結果だということになります。
また「形式至上主義」は、ドイツが生み出したものではないにもかかわらず、「美学」や「文学」と密接な関係を持ちながら、あたかも音楽の本質であるかのような議論が行われてきたというわけです。

最初の部分では、当時のドイツ・オーストリア(というかヨーロッパ全体)でイタリアの音楽家が「重宝」されていたかを説明していて、映画「アマデウス」に出てくるモーツァルトとサリエリの話を思い出しました。

また「形式」に関する議論を読んで、先日狛江フィルの演奏会で取り上げたクーラウの曲(「秘密の竪琴」序曲)を思い出しました。
演奏していて、メロディーの美しさやリズムの楽しさはちっとも感じないのに、「形式」(ソナタ形式)だけはしっかりしているような気がしたので…。
ちなみに、クーラウはベートーベンより16年くらいあとに、ドイツで生まれたそうです。
(のちにデンマークに移住)

この本ではほかにも、「ドイツ人」として扱われているヘンデルが、イタリアで勉強したあとイギリスを中心に活躍し、後にイギリス国籍を取得したことなどを指摘しているほか、「音楽の父」バッハの息子、クリスティアン・バッハもイギリスで活躍したことなどを紹介し、「ドイツ中心」の音楽史に疑問を投げかけます。

まだまだ紹介したい内容がたくさんあるのですが、キリがないので興味のある方は是非お読みください。


▽購入した本
*「鉄ちゃんに学ぶ『テツ道』入門」
野田隆・著、光文社・知恵の森文庫


鉄ちゃんに学ぶ「テツ道」入門

鉄ちゃんに学ぶ「テツ道」入門

  • 作者: 野田 隆
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 文庫





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コメント 4

manamana

歴史を単純に信じないで疑ってみることも、
たまには必要かもしれませんね。
by manamana (2010-11-19 06:09) 

Lionbass

manamanaさま
どこの国でも「歴史」は「勝者」が作った(書いた)ものだと考えた方がいいようですね。
by Lionbass (2010-11-21 11:55) 

青沢東(QMY)

確か、映画アマデウスの中でも、ドイツ語によるオペラを!とそれまでイタリア中心だった芸術を必死で自国に取り込もうとしていたような…。でも、それだけのパワーがあるというゲルマン民族恐るべしですね。
by 青沢東(QMY) (2010-11-30 00:05) 

Lionbass

青沢東さま
まったくその通りです。
ドイツ人恐るべしですね。
「アマデウス」に出てくるサリエリはイタリア人ですね。
by Lionbass (2010-11-30 15:36) 

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