「聴衆の誕生」 [読書]
▼読み終わった本
*「聴衆の誕生 — ポスト・モダン時代の音楽文化」
渡辺裕・著、中公文庫
【帯紹介】
**************************
BGMにすぎなかった18世紀
巨匠ベートーヴェンの誕生
一億総音楽者現象……
クラシック音楽の聴かれ方、栄枯盛衰
音楽文化史の先駆的名著
待望の文庫化!
**************************
1989年に出版され96年に増補版が出た本で、今年2月に文庫化されたそうです。
初めて読みましたが、音楽史に興味のある人間なら読んでおいて損はないと思います。
18世紀、モーツァルトの前後までは、いわゆる「クラシック音楽」は王族や貴族に聴かせるものだったのが、フランス革命などを経て19世紀に入り、ベートーヴェンが活躍するあたりから、「一般民衆」が聴き手になったことは、いろんな本に書かれていることです。
この本はそれにとどまらず、20世紀前半のアメリカにおける「自動ピアノ」の人気や、その後の「レコード時代」に、音楽の聴き方が根本的に変わった事情などについて、かなり詳しく考察しています。
さらには、現代(と言っても1970~80年代あたり)のテレビCMとクラシック音楽の関係や、マーラーブーム、「ミニマルミュージック」などについても触れています。
今では考えられませんが、1970年ごろまで、マーラーは「一部のマニア」が聴くものであり、「アマチュアがマーラーの交響曲を演奏する」と言うだけで(音楽業界的には)ニュースになるほどの出来事でした。
一昨年と去年は、マーラーの生誕150年や死去100年ということで「ブーム」になったので、日本国内でアマチュア・オーケストラがマーラーを取り上げる演奏会は、2年合わせると百回近かった(あるいはもっと?)のではないでしょうか…。
押さえておきたいのは、今のような演奏会のあり方が「つくられた」のは19世紀後半あたりだということ。
「今のような演奏会のあり方」とは、▽客席の照明は暗くする▽聴衆は物音を立ててはならない…など。
逆に言うと、それ以前は客席は明るく、客は飲食・談笑しながら聴くのが普通。
椅子・座席は区別(差別)があって当たり前だったようです。
現在、「クラシック音楽は取っ付きにくい」と思われている主要要素は、たかだか100年ちょっとの『歴史』しかないわけで、いろいろ考えさせられました。
▽購入した本
*「西洋音楽論 クラシックに狂気を聴け」
森本恭正・著、光文社新書
*「聴衆の誕生 — ポスト・モダン時代の音楽文化」
渡辺裕・著、中公文庫
【帯紹介】
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BGMにすぎなかった18世紀
巨匠ベートーヴェンの誕生
一億総音楽者現象……
クラシック音楽の聴かれ方、栄枯盛衰
音楽文化史の先駆的名著
待望の文庫化!
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1989年に出版され96年に増補版が出た本で、今年2月に文庫化されたそうです。
初めて読みましたが、音楽史に興味のある人間なら読んでおいて損はないと思います。
18世紀、モーツァルトの前後までは、いわゆる「クラシック音楽」は王族や貴族に聴かせるものだったのが、フランス革命などを経て19世紀に入り、ベートーヴェンが活躍するあたりから、「一般民衆」が聴き手になったことは、いろんな本に書かれていることです。
この本はそれにとどまらず、20世紀前半のアメリカにおける「自動ピアノ」の人気や、その後の「レコード時代」に、音楽の聴き方が根本的に変わった事情などについて、かなり詳しく考察しています。
さらには、現代(と言っても1970~80年代あたり)のテレビCMとクラシック音楽の関係や、マーラーブーム、「ミニマルミュージック」などについても触れています。
今では考えられませんが、1970年ごろまで、マーラーは「一部のマニア」が聴くものであり、「アマチュアがマーラーの交響曲を演奏する」と言うだけで(音楽業界的には)ニュースになるほどの出来事でした。
一昨年と去年は、マーラーの生誕150年や死去100年ということで「ブーム」になったので、日本国内でアマチュア・オーケストラがマーラーを取り上げる演奏会は、2年合わせると百回近かった(あるいはもっと?)のではないでしょうか…。
押さえておきたいのは、今のような演奏会のあり方が「つくられた」のは19世紀後半あたりだということ。
「今のような演奏会のあり方」とは、▽客席の照明は暗くする▽聴衆は物音を立ててはならない…など。
逆に言うと、それ以前は客席は明るく、客は飲食・談笑しながら聴くのが普通。
椅子・座席は区別(差別)があって当たり前だったようです。
現在、「クラシック音楽は取っ付きにくい」と思われている主要要素は、たかだか100年ちょっとの『歴史』しかないわけで、いろいろ考えさせられました。
▽購入した本
*「西洋音楽論 クラシックに狂気を聴け」
森本恭正・著、光文社新書
「クラシック」という言葉で定義された音楽でも、歴史はそこまででもないんですね。
今の音楽というと、すっかり俗化してしまって、「クラシック」のジャンルでの新曲というのはもう出ないのでしょうか?
by YAP (2012-06-12 07:59)
YAPさま
コメントありがとうございます。
リプライ遅くて申し訳ありません。
次の次の本でお分かりのように、第一次大戦後は、いわゆる「現代音楽」が増えて来て、現在、アマチュアオケが演奏するレパートリーの恐らく8割から9割は第一次大戦以前の曲でしょう。
第二次大戦後でコンスタントに取り上げられるのは、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ブリテンなどごく少数ではないかと思います。
by Lionbass (2012-06-17 10:07)