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「聴衆の誕生」 [読書]

▼読み終わった本
*「聴衆の誕生 — ポスト・モダン時代の音楽文化」
渡辺裕・著、中公文庫


聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化

聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化

  • 作者: 渡辺 裕
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/02/23
  • メディア: 文庫

【帯紹介】
**************************

BGMにすぎなかった18世紀
巨匠ベートーヴェンの誕生
一億総音楽者現象……

クラシック音楽の聴かれ方、栄枯盛衰
音楽文化史の先駆的名著
待望の文庫化!

**************************

1989年に出版され96年に増補版が出た本で、今年2月に文庫化されたそうです。
初めて読みましたが、音楽史に興味のある人間なら読んでおいて損はないと思います。

18世紀、モーツァルトの前後までは、いわゆる「クラシック音楽」は王族や貴族に聴かせるものだったのが、フランス革命などを経て19世紀に入り、ベートーヴェンが活躍するあたりから、「一般民衆」が聴き手になったことは、いろんな本に書かれていることです。

この本はそれにとどまらず、20世紀前半のアメリカにおける「自動ピアノ」の人気や、その後の「レコード時代」に、音楽の聴き方が根本的に変わった事情などについて、かなり詳しく考察しています。

さらには、現代(と言っても1970~80年代あたり)のテレビCMとクラシック音楽の関係や、マーラーブーム、「ミニマルミュージック」などについても触れています。

今では考えられませんが、1970年ごろまで、マーラーは「一部のマニア」が聴くものであり、「アマチュアがマーラーの交響曲を演奏する」と言うだけで(音楽業界的には)ニュースになるほどの出来事でした。
一昨年と去年は、マーラーの生誕150年や死去100年ということで「ブーム」になったので、日本国内でアマチュア・オーケストラがマーラーを取り上げる演奏会は、2年合わせると百回近かった(あるいはもっと?)のではないでしょうか…。

押さえておきたいのは、今のような演奏会のあり方が「つくられた」のは19世紀後半あたりだということ。
「今のような演奏会のあり方」とは、▽客席の照明は暗くする▽聴衆は物音を立ててはならない…など。
逆に言うと、それ以前は客席は明るく、客は飲食・談笑しながら聴くのが普通。
椅子・座席は区別(差別)があって当たり前だったようです。

現在、「クラシック音楽は取っ付きにくい」と思われている主要要素は、たかだか100年ちょっとの『歴史』しかないわけで、いろいろ考えさせられました。

▽購入した本
*「西洋音楽論 クラシックに狂気を聴け」
森本恭正・著、光文社新書


西洋音楽論 クラシックに狂気を聴け

西洋音楽論 クラシックに狂気を聴け

  • 作者: 森本 恭正
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/12/16
  • メディア: 新書


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コメント 2

YAP

「クラシック」という言葉で定義された音楽でも、歴史はそこまででもないんですね。
今の音楽というと、すっかり俗化してしまって、「クラシック」のジャンルでの新曲というのはもう出ないのでしょうか?
by YAP (2012-06-12 07:59) 

Lionbass

YAPさま
コメントありがとうございます。
リプライ遅くて申し訳ありません。
次の次の本でお分かりのように、第一次大戦後は、いわゆる「現代音楽」が増えて来て、現在、アマチュアオケが演奏するレパートリーの恐らく8割から9割は第一次大戦以前の曲でしょう。
第二次大戦後でコンスタントに取り上げられるのは、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ブリテンなどごく少数ではないかと思います。
by Lionbass (2012-06-17 10:07) 

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