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ベネズエラの若者たちの衝撃ふたたび【テレサ・カレーニョ・ユースオケを聴く】 [音楽・楽器]

きのうはこんな演奏会を聴きに行きました。

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~エル・システマ創設40周年記念~エル・システマ・フェスティバル 2015 in TOKYO
テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(Teresa Carreño Youth Orchestra of Venezuela)演奏会
日時:2015年11月17日(火)午後7時開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール(東京・池袋)
指揮:クリスティアン・バスケス
ピアノ:小曽根真
曲目:R.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」
   ラフマニノフ 「パガニーニの主題による狂詩曲」
   R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」
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img_テレサ・カレーニョ・プログラム201511.jpg


ベネズエラで行われている音楽による青少年教育システム「エル・システマ」はご存じの方も多いと思います。
子供たちに無償で楽器を教え、音楽教育を行うとともに、非行を防ぐという世界的に評価されているプログラムです。
私自身、8年前、「エル・システマ」から生まれたシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラを同じ東京芸術劇場で聴き、衝撃を受けました。
(そのときのブログ記事はこちら→「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラの衝撃」

シモン・ボリバル・ユースオケ(現在は「シモン・ボリバル交響楽団」)はその後、世界的に有名になりましたし、そのときの指揮者、グスタボ・ドゥダメルはベルリン・フィルを指揮するまでになっています。

そのときのシモン・ボリバル・オケは、とにかく全員若い(みんな20代)のに技術的にも確かで、しかも「音楽する楽しさ」がステージ全体から伝わってきました。

私はそれ以来、「アマチュアオーケストラはベルリン・フィルやウィーン・フィルではなく、『シモン・ボリバル・オケ』を目指すべきだ」と言い続けています。
「技術的に優れている」よりも「楽しい」演奏、そしてそれ(楽しさ)が聴衆に伝わるような演奏会がアマチュアの目指すべき方向だと思うのです。


今回の「テレサ・カレーニョ・ユースオケ」は「シモン・ボリバル」の弟分であり、エル・システマの「第3世代」にあたるそうです。
8年前の衝撃があまりにも強かったので、今回のオケも同じようにスゴいだろう、とチケットを購入し、予想を裏切られることはありませんでした。
なお「テレサ・カレーニョ」はベネズエラ出身の19世紀のピアノの巨匠(女性)の名前です。


さて、きのうの演奏会ですが、シモン・ボリバル・オケと同様の大編成。
1曲目の「ドン・ファン」は1stヴァイオリン=22人、コントラバス=12人。
弦楽器だけで80人以上で、木管楽器は倍管だったので約20人。
これに金管・打楽器とハープを入れると約130人がステージ所狭しと並んでいました。

この大人数が、文字通り『一糸乱れぬ』演奏。
弦楽器はボウイング(弓使い)までピタリと揃っていますし、管楽器も打楽器も完璧。
それでいてバランスを壊すこともなく、非常に整った演奏でした。
予想以上の素晴らしさでした。

2曲目の「パガニーニ・ラプソディー」は、独奏ピアノとオーケストラのやり取りが結構難しい曲なのですが、まったく乱れがなく、しかも若いオケのメンバーからはソロの小曽根氏への敬意のようなものが感じられました。

プログラム3曲目はシュトラウスの大曲「英雄の生涯」
とても難しい曲ですし、コンサートマスターに高度な技術を要求される長いソロがあります。
この曲も、技術的にも完璧で、しかもオケ全体が集中力を保った感動的な演奏でした。
最後の夕暮れを思わせる静かな部分では、なんとなくジーンときました。
もちろん、コンサートマスター(ミストレス)の女性奏者も素晴らしいソロを聞かせてくれました。
この女性奏者、黒髪のどちらかというと小柄な女性なんですが、体全体を使った力強さも感じさせる弾き方でした。
(この女性、「英雄の生涯」が終わると、アンコールが終わるまで終始ニコニコしていて、笑顔が素敵でした。)

さて、そのアンコールですが、写真のように盛りだくさん。
ラテン・パーカッション(打楽器)やサックスも登場して、大いに盛り上がりました。
img_テレサ・カレーニョ・アンコール201511.jpg

アンコール1曲目の「ティコティコ」が終わったあと、舞台が暗転したと思ったら、奏者たちはベネズエラ国旗デザインのお揃いのジャンパーに着替えてました。
img_テレサ・カレーニョ舞台201511.jpg
(写真はエル・システマ・ジャパンのページから借用)

ここからのアンコールはさらにさらにノリノリ。
楽器を振ったり回したり、立ち上がったり、歩き回ったり。
バーンスタイン「ウェストサイド・ストーリー」の「マンボ」などは、「シモン・ボリバル・オケ」も演奏したと思います。

結局、最後の曲の前に指揮のバスケスが「これで最後!」という仕草をして演奏しましたが、終わったのは午後10時(!)でした。

そのバスケス、まだ30歳前後のようですが、すでに世界各地のオケに招かれ、スウェーデンのオケでは首席指揮者の地位を得ているとのこと。
昨夜の演奏からも、すばらしい指揮者であることがよく分かりました。

ところで、オケの様子をオペラグラスで見ていて思ったのは、「みんないい楽器を使っているようだな」ということ。
8年前に「シモン・ボリバル・オケ」を聴いた(見た)ときは、楽器はそんなに高くなさそうな「普及品」のようで、「日本の(フツーの)大学生が使っているものよりも安いかも」と思いました。
その後、シモン・ボリバル・オケがヨーロッパなどに演奏旅行した様子をテレビなどで見ると、楽器が年々良くなっているのが分かりました。
著名なオケや指揮者などからさまざまな援助が得られているようです。

きのうの「テレサ・カレーニョ・オケ」は、先輩である「シモン・ボリバル・オケ」の初期に比べれば、最初からいい楽器を使っているのがはっきりと分かりました。

コントラバスで言えば、12人のうちブゼット型の5弦が半分くらい。
もしよく知られたP社の製品だとすると、300万~400万円くらいするのではないでしょうか?
(シモン・ボリバルは5弦はあまりいなかったと思うんですが…。)
余談ですが、コントラバスは1人を除いてバス椅子を使ってませんでした。

ホルンも半分くらいはアレキサンダー社の103のように見えましたし、トロンボーンやテューバも高級でした。
そういえば、交代で出てきたテューバ2人のうち1人は銀色でロータリーバルブの楽器(たぶんB♭管)でした。(もう1人は真鍮色)
英雄の生涯のテナーホルンはユーフォニアムでした。
(楽器の話はこの辺にしときます。)

8年前もきのうも考えたのは「若者たちをこんな素晴らしい演奏するまでに育てるのに、どんな秘密があるのだろう」ということ。
「エル・システマ」のことをもう少し勉強したいと思いました。
ベネズエラ全国の優れた奏者を(年代別の)1つのオケに集めるシステムが、これだけの水準の演奏につながっているのかもしれませんね。
日本でも、中学や高校の吹奏楽部やオーケストラから、選りすぐりの奏者を1カ所に集めれば、かなりハイレベルのオケがつくれるのではないでしょうか。


とにかく、オーケストラに興味のある人なら、絶対に聴いて損はしないと思います。
今週土曜日(21日)にもう1度東京公演があるほか、22日(日曜)には「エル・システマ・ジャパン」が活動している福島県相馬市での演奏会も予定されています。
是非お聴きになることをお勧めします。(回し者ではありません。)
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hanamura

細部が思い出せませんが、宝くじ基金によるユース・オーケストラに、涙と汗と(以下省略)体液溢れる感動をした覚えがあります。「若者たちをこんな素晴らしい演奏するまでに育てるのに、どんな秘密があるのだろう」ほぼ同意見ですがぁ・・・。(長女の演奏と成長を、父親として見て来ましたが、指導者(指揮者)次第で、ガラリ変わるのが分かりました。)若者に良い環境を与える機会(資金?)日本国が準備して欲しいです。国がダメなら民間で!
by hanamura (2015-11-18 19:12) 

Lionbass

hanamuraさま
日本でも「エル・システマ」が活動していますので、もっと支援が集まるといいですね。
で、拙著(アマチュアオーケストラに乾杯!)に書いたんですが、日本はアマオケの数が恐らく世界一多くて、吹奏楽もとても盛んなので、「音楽教育のすそ野」の広さは世界に誇れると思います。
by Lionbass (2015-11-24 09:35) 

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