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メンデルスゾーンと『演歌』とクレズマー(下) [音楽・楽器]

メンデルスゾーンの曲が「演歌」みたいだ、という話のさらに続き。

一方で日本の「演歌」ですが、下記のような本を読んだ限りでは、元々は「演説」と同様に、集まった人たちを相手に何らかの主張を伝えるための曲だったとのこと。
つまり「演歌」の「演」と「演説」の「演」は同じ意味合いだったということです。

メロディ日本人論―演歌からクラシックまで (新潮選書)

メロディ日本人論―演歌からクラシックまで (新潮選書)

  • 作者: みつとみ 俊郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/09
  • メディア: 単行本

創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)

創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)

  • 作者: 輪島 裕介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/10/15
  • メディア: 新書



一方で、明治時代に「西洋音楽」が日本に入ってきたときは、いわゆる「お雇い外国人」の手によるものが中心。
それに続き、明治末期~大正期~昭和初期には、ヨーロッパやロシアから多くの音楽家が日本にやってきました。

「ポグロム(ユダヤ人虐殺)」、第一次世界大戦、そしてナチス・ドイツによるユダヤ人弾圧・虐殺があって、日本にやってくる音楽家の中にはユダヤ人も少なくなかったそうです。
「ポグロム」と呼ばれる帝政ロシアにおけるユダヤ人虐殺は、何度も起きたそうですが、有名なのは1980年代(明治中期)のもので、「屋根の上のヴァイオリン弾き」にも描かれています。

こうした明治~昭和初期の「西洋音楽」の流入が、日本の音楽界に影与えたインパクトは大きく、戦前・戦中から戦後の「歌謡曲」にも当然影響を与えているだろうと思います。


話は変わりますが、クラリネットを中心とする「ちんどん屋」という「編成」は、ユダヤの音楽「クレズマー」の典型的な楽器の組み合わせにヒントを得た可能性もあるのではないでしょうか。
ちなみにウェブで調べる限り、「ちんどん屋」が記録に現れるのは1930年代(昭和初期)とのことだそうです。


ところで、「ちんどん屋」とか「サーカス」(見世物小屋?)と聞いて思い出すのはこの曲。


これは「美しき(うるわしき)天然」という曲で、1902年(明治33年)に田中穂積という人が作ったそうです。
(上記演奏はヴァイオリン=諏訪根自子)

今回、このエントリーのために調べるまで、この曲はユダヤ音楽がオリジナルかと思ってました。
何らかの影響を受けている可能性はあると思いますが…。


(話を戻すと)日本の「演歌」の起源についてはいろんな説があるようですが、私はクレズマーの影響は否定できないと思っています。
(もちろん、邦楽とか民謡とか浪曲とか都都逸なども関係しているのかもしれませんが、不勉強なものでその辺は今回触れないでおこうと思います。)

「演歌=韓国起源説」を主張する人もいるようですが、上記の本を読む限り、それを証明できるものはなさそう。
明治末期~昭和初期の日本と朝鮮半島の関係を考えると、1910年のいわゆる「日韓併合」以降に日本の文化が流れ込んだのは確かなので、日本→朝鮮半島の方向なのだと思います。


ということで、延々と書いてきましたが、今回考えたのは以下のようなこと。
▽メンデルスゾーンはユダヤ系で、ユダヤ音楽(クレズマー)に親しんでいたであろうこと
▽明治~昭和初期に西洋音楽が日本に流入した際、ユダヤ系の音楽家が一定の役割を果たしたであろうこと
▽日本の歌謡曲・演歌にはこうしたユダヤ音楽の影響があったと考えられること
▽つまりメンデルスゾーンと「演歌」にはユダヤ音楽の影響という共通項があること
▽その結果「メンデルスゾーンの曲を聞くと演歌を思い浮かべる」


この「メンデルスゾーンと演歌の関係」については、ネットを調べた限りではあまり研究が進んでいるとは思えませんでした。
どなたか詳しい論文や本などあったら教えてください。
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コメント 2

YAP

これはむしろ、Lionbassさんが先駆者となって日本の第一人者となるチャンスではないでしょうか?
by YAP (2014-02-08 10:15) 

Lionbass

YAPさま
そうですね。
時間に余裕ができたら「研究」してみたいと思うのですが、いつになることやら…。(苦笑)
by Lionbass (2014-02-17 07:21) 

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